日本を歯の先進国へ(UCLA小川隆広)

AAASOMコンセプト(クリックして拡大)
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「学術」と聞けば、何か堅いイメージを思い浮かべるかもしれません。日ごろ、臨床や研究活動に従事している現場の歯科医師、歯科医療関係者にとっては、それほど関係のない概念と思われるかもしれません。「大学や大きな学会のことね」と。しかし、学術とは、医療や科学におけるすべての仕組み、ルールを形作る基盤であり、それを培っていく土壌そのものなのです。そして、それらに関連した毎日のコミュニケーションや情報発信もすべて学術活動なのです。従って、学術のあり方は、学会や大学のことばかりでなく、医療や科学の日常業務や運営、そして、それらの発展に大きな影響を与えるのです。私たち歯科医療従事者の未来を決定する鍵を握ると言っても過言ではないかもしれません。


AAASOM口腔先端応用医科学研究会は、日本における新しい学術文化を創造することにより、日本の歯科医療や歯科医学の発展に貢献することを目的に設立されました。日本の歯科医、歯学研究者、そして多くの歯科医療従事者・関係者の潜在性を効率良く引き出せるような学術の現場と構造を創るベンチマークのような存在となれればと考えています。そのための方法論として、研究会では、テーマとアプローチに関するコンセプトを立案しました。ゴールは、1)会員への奉仕と貢献、2)国民を意識した、国民の方を向いた活動の二つです。会員が発言の機会を得たり、実のある知識、人脈、成果を得ることは学術組織の職務であります。また、そのような活動を通じて、その分野のレベルを上げることにより、知識・情報を広く一般へ啓蒙することにより、国民に貢献することは、国の専門学会の責任の一つであります。現在の日本での歯科医療を取り巻く状況を考えると国民の方を向いた活動は特別に重要さを増しているとも言えるでしょう。


まず、AAASOMでは、扱うテーマとして、先端性と全体性を追求します。相反する二つの事象をあえて扱うことで、新しいものを産み出すことを目指します。そして、この包括性の実現によって、より多くの歯科関係者に興味をもっていただけるよう努力していきたいと思っています。具体的には、将来の歯科医療に緊密に関連した先端的で良質の先端科学と歯科業界・分野全体に関わる医療社会的、治療学的、教育的なテーマの双方を扱うということになります。そして、アプローチ方法については、SNSなどを通じての日常で一般レベルでの情報発信、ブレーンストーミング、啓蒙活動、議論を絶えず行うことにより分野の発展のための意識を高めることと、年1回の学術会議の場での集中した、深い議論の二方向を相乗的に組み合わせていければと思っています。


将来の発展には、厳しい現状の認識と共有も必要です。日本国民の歯に対する意識は先進国中、最低とも言われています。日本は、世界有数、あるいは世界一かもしれない、食文化、食へのこだわりをもった国です。世界一流の経済大国であり、文化大国であります。なぜ、食と密接に関連した歯の意識がそこまで遅れをとっているのでしょうか。歯科医療従事者はこのことを重く受け止めて、その改善にむけてやれることを模索していく必要があると思っています。日本には、優秀な歯科医師、歯科関係者が多く、また、将来の歯科医療の発展のために活動を続けている人もいます。私は、それら力を結集することができるならば多くのことが可能になると信じています。人々にふさわしい歯と口の健康を、学術・科学の力で創ってまいりたいと思っています。どうぞ、みなさまの広いご参加をお願い申し上げます。

 

 

UCLA歯学部 小川隆広

略歴

小川隆広 UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)歯学部終身教授。インプラントの光機能化ならびに生物学的研究の世界的権威。2010年、歯科で最も権威のある学術賞の一つであるWilliam J. Gies 賞を米国ならびに国際歯科研究学会IADRより授与される。さらに2011年、米国補綴学会ACPより、補綴医療・科学の発展への最大の貢献を讃えられ、日本人初の最高学術賞の栄誉を得る。さらに、2012年、インプラント分野で最も権威のある学術賞の一つWilliam R. Laney 最高科学論文賞受賞をAcademy of Osseointegrationより日本人初で受賞。インプラント、再生医療、生体材料、補綴学、口腔機能学の分野で、原著論文約130本を含む総出版数は400以上、獲得インパクトファクター約400。インプラント技術や骨再生関連生体材料に関する特許を多数取得。2008年、日本の学術科学の新生をめざし、口腔先端応用医科学研究会AAASOMを創設、現在、会長を務める。その他、IADR国際歯科研究学会補綴部門会長、ACP米国歯科補綴学会の学術担当などを歴任。同氏の光技術を応用したインプラントの活性化、つまり光機能化に関する研究成果は、日本でも広く国民レベルにまで報道され、すでに臨床応用が展開されている。以下のリンクのように、歯科の臨床、学術、科学に関する様々な啓蒙活動・情報発信を行っている。また、小川氏の人物像、学術・研究活動は、朝日新聞「あの人とこんな話」、「味の手帳」、「医療新世紀」(共同通信)、小学館ジャパンナレッジWho’s Who人名事典、フジサンケイビジネスアイ(業界のオピニオンリーダー)、週刊朝日別冊、ウィキペディア百科事典など、広く国内有名メディアでも紹介されている。
 

 

2011年 ご挨拶

時代を前に
日本とは太平洋を挟んで活動する私ですが、日本からの限られた情報と声をきくと、おそらく今の日本の歯科は、時代を前に進めるというごく普通のことも難しい苦難に直面していると思われます。しかし、時代を前に進めようとしなければ、よくて現状維持、悪ければ後退です。そして、現状維持でも、世界から見れば、相対的に遅れていくということも認識しておかねばなりません。一例ですが、誰もがこう言います。「国際学会ではブラジルからの参加が多く増え、日本のプレゼンスは減っている。学術論文では、中国と韓国が大幅に増え、日本の影は薄くなっている。」と。
私が思う、日本の歯科の新生の3つの鍵は、


1.国民からの尊敬と歯科医療の重要さの認知を得る。

2.特に医科、一般科学分野からの尊敬・敬意を得る。

3.歯科医療、大学病院などの黒字化。


です。我々に何かできることはないでしょうか。昨年、我々はDentistry Summitを目指した良質で斬新な会議の方向性を宣言しました。今年の学術プログラムは、またそこに一歩近づいたと思っています。今回も、学術の先生方がすばらしい仕事をしてくれました。その魅力的なプログラムのおかげで、企業のみなさまの参加も年々増えております。さらには、SNSやメルマガ配信もはじめ、リアルタイムでの情報発信や議論の場の拡大を図っています。 
今の時代、生き残りをめざしていては、生き残ることは難しいと私は思います。繁栄しなければならないのです。進化を止めてはいけませんし、進化し続けなければならないのです。多くの皆様方のお力とともに、時代を前に進ませようと思っております。2012年1月21(土)、22日(日)、東京でみなさまとお会いできますことを、何よりも心待ちにしております。

 

2010年 ご挨拶

進化:「再生補綴医学」から「口腔先端応用医科学」へ


研究会名の変更をお知らせいたします。2010年5月1日付けで、私どもの研究会は、「再生補綴医学 研究会」から「口腔先端応用医科学 研究会」となります。当研究会では、過去2年にわたり、2回の学術会議を行い、まだまだ発展段階ではありますが、設立の概念と構想に沿った成果が着実に実りつつあると感じております。会議のプログラムは、科学的質が高く、また学際的なものを厳選し、しかも学術の新しい存在意義の創造を目指した会議のあり方についても、分野間、臨床家研究者間、産学間の融合を密に図ってまいりました。会議の運営・進行にあたっては、様々な工夫・試行錯誤により、活発で、鋭く開かれた議論が可能になったと思っております。研究会の役割の中で、我々の仕事としては、あくまでも良質で機能的なフォーラムを提供することであり、成果が実りつつあるとするならば、それらはすべてみなさまの実質的な参加によりもたらされたものであります。2回の会議を終えた今改めて、心より感謝申し上げます。


本日、当研究会は一つの転換点を迎えました。といいましてもこの動きを、シンプルに学術組織の1つの進化と捉えるならば、このように大々的にご案内することでもないかもしれません。しかし、本日に至った経緯について、是非みなさまにご理解いただきたく、ここに説明する機会を持たせていただきました。


当研究会の設立の理念は、当初からお伝えしてまいりましたように、


 1.常に傑出した特色をもつこと

 2.変化や進化を怠らないこと

 3.会員や国民、時代のニーズを反映するために自由であること
であります。これら3つ要素は、互いに連動しており、すべてが実践されたときにのみ、すべてが実現します。会議に参加された方々にはきっと納得いただけると思いますが、我々は、多くの方々の意見を聞き、広く優れた人材、題材、そして斬新で効率的な会議のあり方を追及し、時代の進化に遅れることなく、いや時代を先導できるように迅速な変化を起こし続けることを心がけております。そして、これからもそうであります。会の発展、時代のニーズ、参加者の背景などを基に、研究会の名称の変更に取り組んできたのも、その進化を求める一貫であります。


半年の議論を重ねました。多くの方々の意見を聞きました。アクティブで先端的な組織では、組織名は時代の変化とともに変化すべきと考えました。学科や学術領域の名称も常に変更、置換、選択・淘汰がなされるのと同じ理由であります。新名称の立案にあたっては、まず最初に、設立当初の会議の目的をより確実に実現できるよう、我々が扱う医療としてのターゲットを明確にすること。しかし、その一方でそれを達成するための必要な方法論である研究科学領域や分野を限定するような文言は避けることを条件としました。今回、旧名称に「口腔」の文言が加えられ、替わりに「再生」や「補綴」が取り除かれた理由であります。第二番目として、当研究会の大きな特色は、臨床家や関連企業、ならびにR&D従事者とともに有益な科学情報を共有し、議論するということであります。従って、当会議のプログラムが扱う題材は、高度ではあるが、研究のための研究ではないことが必要であります。そのことを「応用医科学」という言葉にて表現しました。広義の意味での再生医学、つまり、形態と機能の再建医学・再生医学、ならびにこれらに関連した医学ならびに科学を包括的に含みます。最後に、当研究会は、進化を怠らない、常に上昇志向で、時代を創造する存在であり続けるというミッションを象徴するよう、そして託すように、「先端」を加えました。結果として、一般国民も容易に読め、その意味が理解できるものが完成したと思っております。なお、今回の名称の立案にあたっては、当研究会会員であり、また学術アドバイザーである北海道医療大学の安彦先生にたいへんなご協力をいただきましたことを併せてご報告させていただきます。ありがとうございました。


私どもは、新名称である「口腔先端応用医科学 研究会」は、より多くの参加者のみなさまにフィットし、また科学的、学術的意欲を鼓舞するものであることを願います。そして、今回の研究会名の変更は、この会、ならびに学術会議が常に進化を続けていることのエビデンスの一つであると信じています。みなさまにおかれましては、これからもより一層のご指導と積極的なご参加を心から御願い申し上げます。

 

2009年 ご挨拶

「排他性」ではなく、「包括性」の成功
「補綴も、保存も、ぺリオも、矯正も、放射線も、病理も、解剖もないのではないか。」「基礎研究、臨床研究もないのではないか。」「医学も歯学もないのではないか。」さらには「医科学も一般サイエンスもないのではないか。」「開業医も大学人もないのではないか。」「教授も大学院生もないのではないか」。そして「歯科医師も企業関係者もないのではないか」。私はこう思うのです。「あるのは、顎顔面口腔領域の医療と科学の向上にゴールを同じくするものが、英知と努力を結集するだけである。」このことは、我々のチームが、従来より、歯科口腔領域における学術と科学の理想の形と考えてきたことであり、第1回会議の冒頭に述べさせていただいたことであります。

 

昨年の11月28日、多くの分野からの研究者、臨床家、企業関係者のご参加を頂いて、第一回の会議が開催できましたことを、こころより感謝申し上げます。時間の余裕の無さを強く感じさせるほど、ディスカッションが盛んであったことはまさにみなさまの意気込みを感じ、学際の力を確信しました。そして、この「手作り学会」を成功に導いたのは実行委員のみんなであり、同じ学術人として誇りに思っています。

 

今後も、広く、質の高い参加者を募り、プログラムを充実させ、会議を発展させなければと思っております。どうぞみなさまからのご意見、ご批判をお聞かせください。またみなさま一人ひとりのネットワークが必要であります。是非ども、ご協力願えればと思います。次の学術会議で、またお会いできますことを心より願っております。

 

2008年 ご挨拶

研究会設立のごあいさつ:
わたくしは現在、歯科医師として、歯学研究者・教育者としての、拠点を米国に構えています。その中でわたくしは常に、日本における次世代の医療従事者や研究者のために、そして、日本の将来の科学技術や医療の発展のために、何かできることはないかと考えてきました。
日本には優れた能力、潜在性を秘めた研究者、臨床家が多くいます。彼ら、彼女たちを活かす場をどうしても提供したい。何とか世界を知ってもらいたい。世界で活躍してもらいたい。彼ら、彼女たちの潜在性を引き出すことができれば、これまで叶わなかったことの多くが実現できると考えました。


医療と科学、そして教育におけるすべての活動は、「学術」という土俵とルールの中で行われます。よって、この土俵とルールをより良いものとすることによって、日本の歯科の将来に貢献することができるかもしれないと考えたのです。個人レベルでは、学術人として世界で認められるためには、「クリテイティブ・アクティビティ」と「国際競争力」が必要です。これらのことを育成、実現することを目的に、知識養成の場、発表の場、意見交換・研鑽の場、情報およびビションの発信の場を創造したいと考えるに至りました。そして、当研究会は、


 1.常に傑出した特色をもつこと

 2.変化や進化を怠らないこと

 3.会員や国民、時代のニーズを反映するために自由であること


であることをめざしたいと思っています。皆様のご参加と、ご協力を、是非ともお願い申し上げます。